リクエスト、「突っ走る少女達」

小笠原友菜(おがさわら ゆな)は図書室で読んでいる本を机の上に閉じ、ため息

をつく。

高校3年生、大学受験を控える中、親の仕事の都合で転校。皆も受験の為に

忙しいらしく、転校生をかまっているヒマは無いようでいつも一人ぼっちだ。

だがあまり孤独感は無い。友菜にはいつも本が有った。

本を読むことに没頭すれば寂しくは無かった。

ショートボブの似合う可愛い子という事で告白された事も数回有ったが、別段

男性に興味は無いので全て断った。

 

そんなある日の事。

友菜は休み時間に読書に没頭していると

「ちょっと」

と声をかけれた。

同級生で同じクラスの柳沢愛子(やなぎさわあいこ)が目の前に立っている。

腰まで伸ばしたサラサラな髪の毛が特徴だ。

何でも良い所のお嬢様だと噂で聞いた。

「お友達は作らないんですか?」

「いや、別にいらないです」

「自分から話せば案外お友達ってできると思いますよ」

「別に……」

友菜はうろたえながら言う。

まさかこういう事まで干渉してくる人に始めて会ったからだ。

「いつか後悔しますよ、せっかくの高校最後の年なのに」

「……」

「お友達になりましょう」

「勝手に友達にしないで下さい」

そう言った友菜の心は揺れていた。

実は本当は友達が欲しくてたまらないのではないか?

それと同時にいこじになって反発する自分に嫌悪感を抱いた。

だがもう後には引けない。

「構わないで下さい」

そう言った。

「ボクシングです」

愛子は急にそう切り出した。

「え?」

「ボクシングです。女子ボクシング部の部室を借りましょう」

この愛子という人間は何を言っているのだろうと友菜は思った。

「部室を借りてどうするんですか?」

「それはもちろん、ボクシングの試合をする為ですよ」

「訳がわかりません、いきなり何ですか」

「ふふっ」

愛子は笑いながら続ける。

「理由は良いんです、放課後待っていますから」

そう言って愛子は一方的に行った後、友菜の前から去って言った。

(変な人だな、おしとやかで弱そうなのに)

それからすぐにその話は忘れてしまっていた。

 

 放課後になり、自宅まで自転車で走っているとふと思い出した。

(そういえば愛子さん放課後待ってるって言ってたな)

さすがにもう待っていないとは思うが、ふと気まぐれにUターンして

学校へ戻った。

ボクシングをする気などさらさら無い、いたら試合は断って

すぐに帰ろうと思った。

夕日で空が紅く染まっていた。

その中を自転車で走る。

 

学校について、すぐに女子ボクシング部の部室へ向かった。

部室のドアのノブを回すと開いた。

(まさか本当にいるのか、ずっと待っていたのか)

果たして愛子はそこにいた。

「待ってましたよ、きっと来ると思っていました」

嬉しそうに愛子は笑顔で言った。

だが顔は笑っていても心からの笑みではないなと友菜は感じた。

「私はボクシングするつもりはありません!」

はっきりと言う。

「やはりそうですか」

愛子は一瞬険しい顔をしたが、すぐに笑顔に戻った。

「明日の体育の授業、自由にスポーツを選べるのでボクシングしましょう」

「しつこいですね、何でそうボクシングに拘るんですか?」

「理由は試合が終わってから話します」

友菜はその理由に興味を抱いてしまった。

あまりにおしとやかなその姿は、とてもボクシングが強いとは思えない。

勝てるなと友菜は感じた。

「それじゃあ試合をしましょう」

「良かった!」

愛子はひどく喜んでいる。

「それじゃあ用意をしましょう」

「何をですか?」

「ボクシングにはマウスピースが必要です」

「え? ああ、口に入れる奴ですか」

「ええ、あれが無いと口の中がズタズタになりますから、作っておいて下さい」

新品のマウスピースを愛子から渡される。

「作っておきます、それじゃ今日は帰りますね」

「はい、明日が待ち遠しいです。貴方を叩きのめす事が出きるんですから」

「え?」

「いえ、ただの独り言ですよ」

最後まで愛子は笑顔だった。

 

家に帰り、友菜はマウスピースを作った。

沸騰したお湯にいれ、柔らかくして口にはめる。

出来上がったのはグロテスクな歯形のついたものだった。

「あ」

ふと思い出した。ボクシングアニメの再放送をブルーレイディスクに焼いてあったはずだ。

マウスピースを口にはめたままディスクを探して再生してみる。

そのアニメでは試合が始まってすぐにボディを喰らった主人公がマウスピースを吐いた。

びちゃぁっと唾液を散らしてマウスピースが跳ねる。

(何だかエロい……)

友菜は繰り返しその場面を見た。

大勢の観客の中、唾液まみれのそれを吐き出す事にひどく興奮してきた。

部屋にびちゃっという音だけが繰り返し繰り返し響く。

そして自分がマウスピースをはめていると思い出した。

口から吐き出すと唾がべっとりと付いている。

「これを試合中に吐いたら、べちゃっと跳ねるのかな」

一人事を言ってふと気になって匂いを嗅いで見た。

ツンと鼻を突く匂いがした。

(こんなにエロい物だったのか)

思わず股間をまさぐる。

自分の唾まみれのマウスピースを匂いながら、最低だと思いながらじっとり濡れて来た

性器をこする。

グチャグチャと卑猥な音がして来た。

(私は最低だ、自分の臭くて汚いマウスピースを嗅ぎながらオナニーするなんて)

だが罪悪感よりも興奮のほうが大きかった。

ディスクをリピートモードにしてマウスピースの跳ねる部分をしつこく見ながら

膣口に指を入れる。

愛液の卑猥な匂いとマウスピースの唾の匂いが混ざる。

(変態だ! 変態だ!)

自分を責めながら自慰行為を続ける。

「臭い! 臭い! 最低だ! 最低だ!」

自分を罵るように言う。

「あっ、あっ!」

あっけなく果て、尿道から潮を吹いた。

フローリングの床にそれはびちゃびちゃと散って汚す。

息を荒げながら少しずつ正気に戻っていく。

「ああ、やっちゃった」

友菜は唾液まみれのマウスピースを机の上に置いた。

こんな状態で明日の試合は大丈夫なのかと少し不安になった。

 

 

続く